
ロシアの作家といえばドストエフスキーかな…



今回は『罪と罰』にならぶ傑作をご紹介!
今回はドストエフスキー最後の長編小説である『カラマーゾフの兄弟』について。
かの有名な『罪と罰』に並ぶ傑作とされるこの作品。三兄弟の複雑な人間関係が描かれるが、それぞれが経験する物語もまた読みどころ。
映像化も多くされた作品だが、その魅力的な内容に入るまえに、ドストエフスキーの簡単な紹介から始めよう。
著者について


19世紀後半のロシア人作家を代表するフョードル・ドストエフスキー(1821-1881)は、モスクワにて誕生。青年期にすでに両親を亡くしてしまう。
1846年には、処女作である『貧しき人々』を発表するも、空想的社会主義のサークル員であったことが原因で、1849年に逮捕され、死刑を宣告される。
刑の直前、皇帝から特赦を得たドストエフスキーは減刑を受け、のちに当時の経験をもとに『死の家の記録』や『白痴』などを発表していく。
主な登場人物
作品にはここで紹介する人物以外にも、キーパーソンとなるような人物が多く登場するが、ここでは簡単にカラマーゾフ家のメンバーをご紹介。
- ヒョードル カラマーゾフ家の3人兄弟の父。地主であり、計算高いうえ道化役を演じるのを好む、腹黒い人物。
- ドミートリー ヒョードルの長男。下男グリゴーリーによって育てられ、成人後に父と会う。しかし二人はのちに、財産をめぐって争いを始めるようになる。
- イワン ヒョードルの次男で、三男アレクセイと同様に父の二人目の妻ソフィアから生まれ、無神論者である。
- アレクセイ(アリョーシャ) カラマーゾフ家の三男で、上の二人の兄や父ヒョードルとは異なり、清純で穏やかな性格。修道院で暮らす。
あらすじ
対立


ある日、ドミートリーとその父ヒョードルの対立を理由に開かれた、アリョーシャの敬愛する修道院のゾシマ長老を交えての家族会議が開かれる。
その後、ドミートリーはアリョーシャに、婚約者カテリーナや、彼が通っていた女性グルーシュニカとの関係を打ち明ける。イワンはこのカテリーナを恋慕っていた。
さらにドミートリーと対立するヒョードルもまたグルーシェニカに骨抜きにされていたことも、彼らの女性関係をさらに複雑化させていた。
加えて、ヒョードルから遺産代わりに受け取った金をドミートリーが使い果たしたのみならず、カテリーナから奪った大金をグルーシェニカに注ぎ込み、事態は深刻であった。



遺産と恋の問題が父と息子を対立させていたんだね…
翻弄


アリョーシャはある日、下男のスメルジャコフからイワンが料理屋でドミートリーと待ち合わせしていることを聞き、彼のもとに向かう。
イワンはアリョーシャに「大審問官」の物語を聞かせ、彼の無神論の考えを伝える。弟と別れたイワンは父に従ってチェルマシニャーへ向かおうとするもこれを中止する。
アリョーシャはその後、死を間近にしたゾシマ長老のもとを訪れ、彼から自らの改心などの過去、さらに愛や傲慢についてアリョーシャらに伝える。
ドミートリー


ゾシマ長老が亡くなり、その後腐臭が発生したことから騒動が起きる。この騒ぎには聖人の遺体が腐らないという修道僧たちの迷信が根底にあった。
アリョーシャは彼の棺の前で祈り、疲れのため眠り込み夢をみる。聖書の福音書にある婚礼の場面であったが、そこには長老の姿もあった。
他方でドミートリーは金の工面に奔走しており、三千ルーブルを確保するために数人に援助を求めるも、彼の思うようには話が進まない。
そして、グルーシェニカが父ヒョードルのもとにいると考え、彼の家に向かったドミートリーだが、下男のグリゴーリーに掴まれ、杵を彼の頭上に振り下ろす。



このドミートリーの行為から、物語はクライマックスへ。
公判


グルーシュニカの愛を再び手にしたドミートリーであったが、彼は父殺害の容疑をかけられて逮捕されてしまう。
そしてイワンはスメルジャコフと面会し、本人の証言について聞き出そうとし、さらに3度目の面会の際には、スメルジャコフ自らが父の殺害を実行したことを聞く。
ついにドミートリーに対する公判が開始され、彼に関係する証人たちが次々と法廷で証言を行うが、その時点ではすでにスメルジャコフは自殺していた。
そしてスメルジャコフが殺害したことの証拠の少なさや、ドミートリーに不利となるような証言などから、最終的にドミートリーに有罪の判決が下される。
Point
兄弟の物語


あらすじを紹介する中ではくわしく書けなかったが、物語の中心となるのは題名が表す通り、それぞれ個性的な3人の兄弟たち。
作中で圧倒的に存在感を表すのが、長男のミーチャことドミートリーであるが、次男のイワンもまたスメルジャコフや悪魔との対話を通して、際立った存在となっていく。
そして、カラマーゾフ家の中でも異質な存在として描かれるのが三男のアリョーシャ(アレクセイ)だ。語り手は彼のことを、作品冒頭で「わたしの主人公」と呼ぶ。
女性関係


作品を読むなかでとりわけ印象的なのはやはり、三人の兄弟と女性たちとの関わり。特にグルーシェニカやカテリーナについての描写がポイントとなるだろう。
僕が読んだ光文社の古典新訳文庫版では、第五巻にて訳者の亀山郁夫が作品について詳しく解説しているが、その中にはこの二人の女性についての分析も含まれる。
そこで亀山はグルーシェニカのアリョーシャに対する関心と、発表されることのなかった「第二の小説」で彼が彼女に接近するエピソードが用意されていた可能性を指摘している。
先ほど「わたしの主人公」と呼ばれるアリョーシャについて紹介したが、物語の重要な地位を占める彼と、グルーシェニカが今後どのように関わっていくのかを読むことができないのは残念。
さいごに
だいぶ前に『罪と罰』を読んだきりで、ドストエフスキー作品にあまり触れてこなかった僕だが、今回ようやく『カラマーゾフの兄弟』を味わうことができてよかった。
『白痴』も実はすでに手元にあるため、すぐにでも読み始めたい気分だが、その感想などもまた追ってご紹介したい。
今回この記事を通して関心を持ってくれた方はぜひ、『カラマーゾフ』のドミートリーによる破天荒ぶりに振り回されてみるのもいいだろう。



ぜひ作品を読んでみてね!
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