【ドイツ文学】父との確執と友の死!シラー『ドン・カルロス』

カルロスってことは、スペインのお話かな?

その通り。オペラ『ドン・カルロ』の原作にもなったよ。

自分の愛する人が自らの親となったなら、その想いを捨て切ることはできるだろうか?

今回ご紹介するのは、フリードリヒ・フォン・シラーの劇作品『ドン・カルロス』について。これはジョゼッペ・ヴェルディによってオペラ化もされた。

スペインの王太子カルロスと、彼の父フェリペ二世を中心とする物語だが、実際にスペインで起きた事件が元になっている。

それではさっそく作品のあらすじを見ていく前に、主な登場人物をご紹介。

Contents

著者について

カールスルーエにある軍学校に入学したシラーは、連帯つき軍医になるべく学び始める。そして彼は1781年に匿名で『群盗』を発表。

この作品は大きな成功を収めるが、公爵の意思に逆らって執筆した作者のシラーは、罰を受けた上に執筆禁止の令を受けることに。

そして、歴史学に専念した彼の成果は、『三十年戦争史』(1790)や『ヴァレンシュタイン三部作』(1799)に生かされた。

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主な登場人物

  • フェリペ二世 スペイン(イスパニア)王であり、政略のためエリザベトを王妃として迎える。
  • ドン・カルロス 王太子であり、エリザベトの婚約者であったが、父フェリペが彼女と結婚する。
  • エリザベト フランスのヴァロア家出身の女性。かつての婚約者・息子カルロスの求愛を受ける。
  • ポーザ侯爵 マルタ騎士団の騎士であり、カルロスの親友。友のために奔走するが….。
  • アルバ侯爵 王が信頼を寄せる人物。スペインの支配下にあるフランドルでの反乱鎮圧を任される。
  • エーボリ公女 王妃つきの女官。カルロスに思いを寄せる一方、フェリペ二世の寵愛を受ける。

あらすじ

マドリード南方のアランフェスの宮廷にて、王子カルロスと僧正ドミンゴの対話から物語が始まる。そこでは自らの許嫁と結婚した父フェリペへの不信が、王子の口から語られる。

ある日、小姓から婦人による手紙と鍵を受け取った王子は、これがエリザベトからのものと思い込み、彼に思いを寄せるエーボリ公女のもとを訪れる。

王子への求愛は失敗に終わるが、対話の中で彼がエリザベトに抱く思いを察した公女。彼女はエリザベトを好ましく思わないドミンゴとアルバ公のもとへ向かうのだった。

Point

ここからは作品のポイントについて見ていく。ただ物語のネタバレになる点もあるので、これから読む方は注意してほしい。

カルロスとエーボリ

王妃エリザベス

自らの婚約者を父に奪われた、この物語の主人公カルロス。とりわけ印象的なのは、彼が慕うかつて自らが愛し、今や母となったエリザベトに対する盲目な態度。

彼女をめぐるカルロスと父との確執もまた、作品を読むうえで重要なポイントであるが、忘れてはいけないのが王妃につく女官の一人である、公女エーボリの存在。

彼女のカルロスに対する失恋と、それに続くエリザベトへの嫉妬と憎しみが、物語の歯車を動かしていく。また物語の中で暗示される王と彼女の愛人関係も、目立たないが登場人物の構成に深みを与えている。

登場人物の関係性を意識しながら読みすすめることが大事だよ。

ポーザの存在

ポーザ侯爵

主人公ではないが、作中でとても重要な役割を担うのがカルロスの親友であるポーザ侯爵だ。

物語の序盤ではさほど目立たない存在であるものの、後半からは王フェリペ二世と王妃エリザベトの信頼を得て、王子をフランドルの地に向かわせようと画策する。

その当時、旧教のスペインの治下にあったオランダの新教徒の間で、まさに反乱が起きようとしており、ポーザは友カルロスにフランドルの解放を託そうとしていた。

カルロスを守るために自ら罪を被り、銃殺されてしまう彼の姿からは、彼が理想と友情に支えられた存在であることを物語っている。

題材と歴史

初版の表紙

マンハイムの国民劇場の経営者を通じてシラーは、1782年に『ドン・カルロス』の題材に触れることとなる。これはセザール・ヴィシャール・ド・サン=レアルという人物による歴史小説だったようだ。

この作品から着想を得たシラーは、史実にとらわれずに執筆を進めるのであるが、日本語訳版の訳者の解説によれば、親友ポーザには第二の主人公というべきほどに重要な地位が与えられた。

歴史的な背景に手を加える手法は、『オルレアンの少女』の記事でも触れたが、シラーによる舞台作品を考えるうえで重要なものとなるため、ぜひチェックしておきたい。

『ドン・カルロス』が発表されたのち、シラーは三十年戦争や傭兵隊長ヴァレンシュタインを題材とした作品を書きはじめ、かねてから続けられてきた歴史学への取り組みが本格化していく。

さいごに

『ドン・カルロス』を読む際には、ぜひ歴史的な背景を踏まえて読んでみることをオススメしたい。

もちろん、シラーによる脚色もかなり強いのだが、どの点で彼がどのような修正を加えているかを意識することで、面白みが増すはずだ。

また、シラーの政治的思考がこの作品に、とりわけポーザ侯爵の理想に込められているという解釈もあるようだが、その点についてもいずれ考えてみたい。

ぜひ読んでみてね!

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この記事を書いた人

ドイツ語講師を務めながら、ドイツ中世からバロックの文学研究中。主要な作家・作品についての記事を書いています。

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