【ドイツ文学】ヨアヒム・ブムケ『中世の騎士文化』

マネッセ写本に描かれたヴァルター・フォン・メッツェ

今回はドイツ文学研究、とりわけ中世の分野で大家として知られるヨアヒム・ブムケ(Joachim Bumke, 1929-2011)の著作について。

中世ドイツの文学は僕自身の専門でもあり、研究者を志す人々にとってはバイブルともいうべき重要な作品だ。

著者についての情報や作品の概要に触れたのち、重要なポイントについて書いていくことにしたい。

Contents

著者について

ヨアヒム・ブムケはハイデルベルク大学で博士号取得後、同大学にて助手を務めながら教授資格を得る。

1962年にハーバード大学に招聘された彼は、3年間そこで教鞭をとったのち、ベルリン自由大学やケルン大学にて教授職を務める。

多くの著作を残したブムケであるが、その専門は中世の歴史的・文化的基盤を対象としたものであった。

作品の概要

本書では中世の貴族社会についての紹介から始まり、騎士や商人などの様々な身分や、宮廷社会についての叙述へと進んでいく。

フランス文化がいかにして受容されたか、さらに建築物の様式、そして衣服をはじめとする物文化など、そのテーマは多岐にわたる。

作品の原題が『Höfische Kultur. Literatur und Gesellschaft im hohen Mittelalter(宮廷文化-中世の文学と社会)』とあるだけあって、作品のメインは文化と文学について。

Point

中世を味わう本

『中世の騎士文化』はブムケの代表作ともいうべき著書であり、その特色はなんといってもこれに使用された膨大な資料の数々。

とくに文芸作品から中世の文化的な背景を詳しくまとめていくブムケの手法は、当時の文学を研究する僕にとって、読んでいてとても楽しいものであった。

また、著者が述べているように、この作品は研究者らのみではなく、この分野について知識のない者に対しても向けられている。

ブムケの幅広い視野や、しっかりとした論拠に則った彼の主張、そして門外漢でも楽しめるテーマは、多くの読者に中世を味わう機会を提供する。

文学から見つめる中世

ブムケが中世の文化や風習について論じるとき、そこで当時の様子を物語る資料が限られる際は、貴族社会における宮廷文芸が手掛かりとなる。

中世ドイツの有名な作品『トリスタン』や『パルチヴァール』などは、たとえそこに豊富なフィクションが織り込まれていても、中世を垣間見ることは十分に可能だ。

また、当時の識字率の低さから、作品たちは多くの場合に朗読を通して受容された。そうしたメディア的な現代との違いにも目を向けてみたい。

その意味で、最終章である第七章「宮廷時代の文芸活動」は、本作品のハイライトとしてぜひ読んでいただきたい箇所でもある。

中世の騎士

日本ではアニメやゲームの影響もあってか、騎士に対する関心も高い。そのため、原題を変えてあえて「騎士文化」という言葉が使われているのも、騎士人気の表れだろう。

騎士が中心的なテーマではないにせよ、騎士の概念やその身分についての解説もあり、中世ドイツの騎士に興味がある方は、その他の周辺的な事柄も含めつつ楽しめるはず。

個人的には騎士を表す語、つまりラテン語「ミーレス」やフランス語「シュヴァリエ」、そしてドイツ語「リッター」についての紹介に面白さを感じた。

ただ繰り返しとなるが、騎士は本来この本のメインテーマではないため、あくまでも「文芸作品に登場する騎士」について、ブムケによるコメントがなされていると考えてほしい。

さいごに

ドイツ中世の文学を読む者なら誰しも、今回ご紹介した著作をすぐさま読むべきなのだが、自分の場合は何度も後回しにしてきてしまっていた。

ただそのそのおかげか、この本の中で言及されている作品の大まかな流れを把握した状態で本書を読むことができたと思う。

もちろん読んだことも聞いたこともない文献は多くあり、これらはいずれ、読む機会があるだろうと考えている。

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この記事を書いた人

ドイツ語講師を務めながら、ドイツ中世からバロックの文学研究中。主要な作家・作品についての記事を書いています。

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