【ドイツ文学】フリードリヒ・フォン・シラー 『オルレアンの少女』〜シラーが描くジャンヌ・ダルク〜

戦うジャンヌダルク, by Hermann Stilke (1843)

ジャンヌ・ダルクといえば、神の啓示を聞いた人だね!

その通り。ここではシラーが描くジャンヌ像を見ていこう。

今回ご紹介するのは、フリードリヒ・フォン・シラー (Friedrich von Schiller, 1759-1805)による『オルレアンの少女』(die Jungfrau von Orleans, 1803)について。

その主人公はあの有名なジャンヌ・ダルク(Jeanne d’Arc)。フランスの国民的ヒロインであり、たくさんの小説や映画などでも扱われるほどの人気人物だ。

しかし、シェイクスピアヴォルテールも彼女を自分たちの作品に取り上げたものの、そこでの描写は否定的であった。

それではさっそく、ドイツが誇る劇作家シラーが、ジャンヌをどのように主題化していったのかを見ていくことにしよう。

この記事でわかること
  • フリードリヒ・フォン・シラーについて
  • 『オルレアンの少女』のあらすじ
  • 作品を読むためのポイント
Contents

著者について

カールスルーエにある軍学校に入学したシラーは、連帯つき軍医になるべく学び始める。そして彼は1781年に匿名で『群盗』を発表。

この作品は大きな成功を収めるが、公爵の意思に逆らって執筆した作者のシラーは、罰を受けた上に執筆禁止の令を受けることに。

そして、歴史学に専念した彼の成果は、『三十年戦争史』(1790)や『ヴァレンシュタイン三部作』(1799)に生かされた。

あらすじ

奇跡の乙女

ジャンヌ・ダルク by Jean Pochore (1503)

ジャンヌの姉の婚礼前日が物語の始まりの場面。その頃フランスはイングランドとの百年戦争の最中にあり、オルレアンは敵軍から包囲を受けることに。

神からの啓示を受けたジャンヌは故郷を去り、のちのフランス王シャルル7世の前に表れ、彼の祈りの内容を当て、自らが神により送られた者であると伝える。

戦いの中で先陣を切って功績を立てるジャンヌは、イングランドの軍から悪魔として恐れられ、さらには王と当初敵軍についていた彼の従兄弟ブルグント公爵との和解を成立させる。

戴冠式

ジャンヌ・ダルクを描いたミニアチュール

フランス人の悲願であったシャルル7世の戴冠が行われることになったが、式に際してよろめきながら旗を持って歩くジャンヌの姿を見た父は、彼女を正しい信仰へと導こうと決心する。

そこで父がとった行動は、王たちの前でジャンヌの功績が悪魔によるものと叫ぶことだった。これに対し、ジャンヌは親の発言を尊んで何も反応せず、結果的にオルレアンを去らねばならなくなる。

そしてジャンヌは自ら敵軍のイサボー太后のもとに向かって捕虜となったのち、戦況を見守るものの、不利になると神に祈り、鎖を引きちぎり戦場へ。

フランス軍の勝利に終わるが、ジャンヌは戦場で倒れ、のちに意識を取り戻すも、彼女に手を伸ばすマリアを空に見ながら息を引き取るのだった。

Point

シラーのジャンヌ

『火刑台のジャンヌ』, by Hermann Stilke (1843)

作品の中で特に印象的なのは、上の画像にあるようなジャンヌの火刑が行われない点。僕らが知るジャンヌは啓示を受けて王のために戦うも、最終的に火刑に処されてしまう。

この点はシラーのオリジナリティが最も強く出ている箇所で、作品の中でジャンヌに対する評価をとても高めようとする試みの表れだ。

この記事の冒頭にも書いたように、ヴォルテールが彼女を否定的に描いたのとは大きく異なり、その英雄的な性格が強調されているのが特徴。

ジャンヌは啓蒙主義の視点からすると、反理性のものとして批判されるべきものだったんだ。

ジャンヌの恋

シャルル7世の戴冠式でのジャンヌ, by Jean-Auguste-Dominique Ingres (1854)

シラーは大胆に史実に手を加え、独自のジャンヌ像を描いているのだが、その中でも敵方のライオネルに対する彼女の恋は重要だ。

あらすじには書かなかったが、ライオネルにトドメを刺す直前、ジャンヌは偶然彼の素顔を見たことで恋に落ち、その命を奪うことができない。

おお、わたしが、このわたしが、清い胸に男の姿をそっと秘めてゐるといふのか?

神様の栄光に充ちたこの心の臓が、俗世の愛に脈打って良いものだらうか?

シラー(佐藤通次訳): 『オルレアンの少女』, 第8版, 岩波書店, 2020, 196頁.

この場面を境に、ジャンヌは自分の行為を罪として自責の念に駆られ、まさにこの恋がジャンヌの転落の始まりとなるのだった。

ジャンヌが俗世の愛に苦しみ、彼女が理想とする姿とは分裂した状態に置かれることは、シラーが描くジャンヌの最期のために必要なものだった。

ジャンヌが迎える最期については、実際に読んでみてね!

さいごに

シラーの作品については、『群盗』や『ヴィルヘルム・テル』などご紹介したいものがたくさんあるが、今回は最近読んだものをご紹介する形となった。

映画化されたジャンヌの物語は、イングリッド・バーグマン主演の作品を観た記憶があるが、なかなか良かったと思う。ミラ・ヨボヴィッチ版もチェックしたい。

また、シラーについての生涯を扱った記事もそろそろ投稿できると思うので、ぜひそちらもどうぞ。

ぜひ皆さんも読んでみてね☟

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この記事を書いた人

ドイツ語講師を務めながら、ドイツ中世からバロックの文学研究中。主要な作家・作品についての記事を書いています。

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