アーサー王を扱った書籍が多くあるなかで、特に高い評価を集めるのが、今回取り上げる『アーサー王の死』だ。
トマス・マロリーは本作を完成させてから二年後に他界し、出版を手がけるウィリアム・キャクストンによって1485年に印刷された。
ここで紹介する本は抄訳であるため、キャクストン版全体ではないが、アーサー王物語について知るうえで重要なストーリーが楽しめるはず。
著者について
著者トマス・マロリー(1399-1471)はなかなかの悪党で、18ヶ月間の間に強盗や窃盗、さらには強姦の容疑で告訴されていたそう。
幾度も投獄されたこの人物と、著者マロリーは別人であるという説もあるが、作品の一部が投獄中に書かれたことがウィンチェスター写本と呼ばれる文献から分かっている。
マロリーの作品が持つ後世への影響力は強く、彼の後に続くアーサー王物語の多くの著者が、マロリーによる物語を下敷きにしているほどだ。
あらすじ
アーサー王の誕生
アーサー王の父であるウーゼル・ペンドラゴンは王の生まれる前、ティンタジェル公の奥方イグレーヌに熱烈に恋をする。
ウーゼル王は激しい愛欲に駆られ、王の助言者である魔術師マーリンに頼み、ティンタジェルの姿になってイグレーヌを抱こうと試みる。
その直前に本物のティンタジェルは戦いで死に、同衾に成功したウーゼルとイグレーヌの間にできたのが、アーサーであった。アーサー王伝説の始まりである。
アーサーの即位
ロンドンの教会墓地の主聖壇前に、「この剣を抜いたものは王となる」と書かれた大石が現れる。アーサーは剣を引き抜き、イングランドの王に任命される。
最初、アーサーの乳兄弟であるケイがこの剣を抜いたと主張するも、すぐに引き抜いた人物がアーサーであったことが判明したのだった。
ロット王や「百人の騎士の王」などが叛逆を企てるも、その戦いに次々と勝利していくアーサー。ローマ皇帝ルーシャスなどの強敵も打倒し、その名声を高めていく。
ランスロット
円卓の騎士として優秀な騎士が多くいるなかで、段違いに強い騎士がランスロット。アーサーの信頼を得ていたこの男はしかし、グウィネヴィア王妃との不倫関係に。
このことが発覚すると、アーサーは王妃を火炙りにしようとする。彼女を救い出したランスロットならびにその仲間たちと、アーサー王側の騎士たちは、大きな戦いへと突入していく。
王妃をアーサーに返し、彼の国を去ったランスロットは、再びアーサーの軍勢と剣を交えることに。アーサー側には、彼の忠実かつ勇猛な騎士、ガウェインがいた。
ランスロットによって二人の兄弟を殺されたガウェインは、相手の並々ならぬ強さに圧倒されて敗北を喫する。そしてアーサー王の軍勢は、ある「知らせ」のために引き返す。
よみどころ
ガウェイン vs ランスロット
弟のガレスとガヘリスをランスロットに殺害されたガウェインは、その復讐を果たそうと怒りに燃える。
このガウェインという人物は、アーサーの甥にあたり、円卓の中でランスロットと並び最も優れた騎士の一人。二人の対決は、いわば円卓における頂点争いであるともいえる。
ガウェインには特殊な能力が備わっていて、9時から12時までの間、彼の力は3倍になる。しかし彼の攻撃に耐えきったランスロットは、激しい反撃を繰り出すのであった。
通常時でさえ強いガウェインの力が三倍になっても、互角に戦うことができるランスロット、強すぎる…。
アーサーの死
アーサーの軍勢がランスロットらと戦うなか、円卓の騎士であったモルドレッドが王に反旗を翻し、イングランドの王になろうと試みる。
このモルドレッド、実はアーサーの息子にあたり、王とガウェインの母との間に生まれた子であった。
モルドレッドを殺害した後、アーサーは名剣エクスカリバーを水中に投げ込ませ、傷を癒すためにアヴァロンの島へと向かう。
その後、ある寺院にアーサーが埋葬されていることが一人の隠者によって伝えられるが、彼の死についての真相は明かされない。
と、あらすじの延長のような書き方になってしまったが、本作品の主題でもある彼の死についての詳細が伏せられている点が興味深い。
そして、アーサーの生存説も紹介されるが、語り手がここで自分の意見として、王が亡くなったと主張する点も、語り手の立場を考える上で面白い。

